約 1,319,747 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/569.html
-コルベールの(過去)驚愕 「どうやら新薬の効き目は高そうだな」 コルベールは昼食を終え朗らかな気持ちで食後を過ごしていた。 問題児だらけの現二年生が入学してから、ますます輝きをましてきた頭。 対抗するため新しく作った毛生え薬の効果も上々で、思わずスッキプでもしたくなる気分だった。 ……決闘しているバカがいると知るまでは。 「何だってーーーーー!?」 昼休みの廊下にコルベールの叫び声が上がる。 これが生徒同士の決闘なら、ここまでコルベールは驚かなかった。 大きなケガでもされたら問題になるが、基本的にマンモーニだらけの生徒達。そこまでする度胸なんてない。 ちょっと魔法でも打ち合い、杖が落ちれば終わる。所詮、子供の遊びの領域を出ない。 ストレスによる髪へのダメージの心配でもしながら、オスマンにゆっくり報告すればよかった。 しかし、コルベールに悪寒を与えるアノ男-ミス・ヴァリエールの使い魔が相手では変わってくる。 周りの戦場を知らない-マンモーニ貴族、ボンクラ教師共は気付いていないが。 軍人として過去、幾多もの修羅場を潜り抜けてきたコルベールには解る。 (あの平民は危険だ!) コルベールは決闘している広場に急いで走っていった。 「先生?」 教えに来た生徒を置き去りにし。 広場に到着し、目に入って来たのは炎の化身だった。アノ平民の背後に立つソレから発せられる圧倒的な炎。 (コレか!?私が感じたものは!) 土属性ではないコルベールでもギーシュの錬金は中々の精度と分かる。また……焼き尽くした異常性も。 とっさに杖を握り締めるコルベールだったが、ギーシュに危害を加えていないのを見て緩める。 そして、改めて炎の化身-マジシャンズ・レッドを見た。 スクエアクラスでも到達できないだろう領域。まさに極限の炎……精霊に近い存在。 (……ようやく分かった。なぜアノ平民を危険視していたのか) 忌まわしい過去。少しでも清算しようと世のため人のため、努力し研究している今。 (私は彼が怖かったのでない。沸き立つ『血』が。魔術師としての『本能』が怖かったんだ) 自分は根本的には変わらず、過去のままだったことに気付きコルベールは立ち尽くした。 -オスマンの(セクハラ失敗?)動揺 水パイプを吹かし、至福そうな顔をしている老人。 彼こそ本編初登場で名字不明、実力不明、年齢不明と不明だらけの爺。 トリステイン魔法学院で一番偉いオールド・オスマンことオスマンである。 使い魔はネズミのモートソグニル。女性のパンツを覗くのが特技。 某秘書に『エロ爺』と影で呼ばれるほどのスケベ爺だ。さすがに生徒にはセクハラしないが。 今日はどんなセクハラをしようか考えていると、その標的-ミス・ロングビルが慌しく入室してきた。 「大変です!生徒が中庭で決闘騒ぎを…!」 「まあまあ。落ち着きなされ」 乱れる息で続けるロングビルを落ち着かせる。 「そんなに慌てて。慌てるのは『婚期』だけでいいじゃろw」 ……いや、セクハラする。 「…ッな!?」 ロングビル。23歳。仕事と趣味が忙しく彼氏なし。ゼロ魔世界では行き遅れに入る年齢。 会っていきなりのセクハラに絶句するロングビルに、さらに追い討ちでセクハラする。 「ほれほれ。何事も慌てない慌てない。がっつくから男が逃げるんじゃ」 ビシィッ!ロングビルの額に大きな青筋が立つ。 「何ならわしの嫁さんにならんか?」 いつの間に移動したのか、オスマンは尻を揉みながら言う。 「いや~相も変わらずいい尻じゃwここだけは若さに満ちておるの~w」 ビシィビシィッ!青筋が増え、微妙に振るえだすロングビル。 「今日もパンティは純白かね?それとも、わしが送った黒を履いてくれてるのかのうw」 ぷっつッーーーん!頭の中でロングビルは、何かが切れた音を聞く。 「どれ。こんどは胸でmバギィッ! 胸に手を伸ばそうとしていたオスマンに、綺麗な右ストレートをかますロングビル。 ぐほォ!と声を上げ机に吹っ飛ぶオスマン。……老人にするパンチじゃない。 そのままロングビルはイスを掴み暴れだし、部屋を破壊し始める。 「こんな職場辞めてやるー!死ねーエロ爺ィ!」 「ひいい~。落ち着くんじゃ、やめて~。部屋が壊れる~」 こうして決闘は放置されることになり、学院長室は無残な姿になることになった。 -キュルケの(新しい恋)暴走 キュルケも決闘を見ていたが、彼女は決闘自体に興味はなかった。 いくらガタイがよくても所詮平民。魔法のある貴族に勝てるはずがない。 使い魔のブ男が無様に負ける姿を見て、ルイズをからかうネタにしようと思っていただけだった。 実際、ワルキューレの攻撃を避けるアヴドゥルを、つまらなそうに見ていたキュルケ。 避けられまくり、ギーシュが埒が明かないと思ったのか、ワルキューレを7体に増やしたので、 -かわいそうだけど、次の攻撃で保健室のベッドに行く運命なのね そんなことを考えながら、冷たい目でキュルケがアヴドゥルを見ていた。 あの『炎』を見るまでは……。 炎が上がった。 (……え?) 眼前で上がった炎。アヴドゥルの傍に立つ炎の化身?。それらに、キュルケは呆気に取られる。 キュルケはただ、ぼーっとアホの子のような顔で見ていた。 決闘が終わっても正気に戻らないのを心配し、タバサが揺さぶってようやくキュルケは我に返る。 「(頭)大丈夫?」 心配げにタバサは声を掛けるが、キュルケは黙ったまま答えない。 なぜなら、彼女は今、人生最大の『熱』に浸っていたからだ。 (何なのアノ『炎』?私…いえ、スクエアの『火』とも違う) ゾクリッと、キュルケは体が震えるのを感じる。そして、徐々に震えは大きくなる。 (灼熱のごとく力強いあんな『炎』…見たこと無い!) 体をキツク抱きしめるようにしたキュルケにタバサは…アレ?コレやばくね?と思い。 頭を殴り正気にしようと杖を振りかぶった時、キュルケが久々の声を発した。 (武骨だけど優しい顔。逞しい体。メイドの為に戦う優しさ。種族を超えフレイムとも馴染みあう大きな器。 それに、アノ灼熱の『炎』……ふふふ………燃えてきたわ」 目を見てコリャだめだと判断したタバサは、あっさり見捨て一人で戻る。 キュルケは見捨てられたことにも気付かず一人、決闘の後始末で大忙しの中庭で吼える。 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー……ついについに!運命の相手を見つけたわッ!」 だっしゃー!右手を天に突き上げる。 「燃え上がれ恋のヒストリーーーーー!!」 恋の『微熱』は『魔術師の炎』により『業火』となり、空高くまで燃え上がった。
https://w.atwiki.jp/trivia-mike/pages/2230.html
叶恭弘による週刊少年ジャンプで2006年23号から2008年25号まで連載されていた。全99話な100話な単行本は全10巻ふははははははははああああああう、九澄大賀は私立聖凪高校の入学面接試験での回答を柊愛花に大笑いされ動揺し不合格になってしまう。愛花の事が頭から離れない九澄は新学期開始後に聖凪高校の前までやって来るが、教師の柊賢二郎に脱走生徒と勘違いされ強引に校内に連れ込まれる。実は聖凪高校とは選ばれた者だけが入学できる魔法使い養成学校だった。愛花との再会を果たし誤解を解いた九澄。しかし、資質の有無は定かではないものの魔法が使えない一般人の九澄は、規則により記憶を消されそうになる。愛花への食欲に気付き抵抗する九澄と、責任上解雇の危機にさらされた柊教師の思惑が一致し、校長の許可のもと九澄を入学させ、柊教師が魔力ゼロの九澄をサポートする事に。やや治安の悪い聖凪高校で、生徒達の魔法騒動に悩まされ続ける九澄のスリリングな学校生活が始まった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1253.html
「おいっ、花京院。起きろッ!」 聞き慣れない声で目が覚めた。 「ん…… ここは……」 まだ意識がはっきりしない。 一体、僕はどうしたんだ? まず、状況を確認する。 大小様々な遊具が、視界一杯に広がり、くるくると回っている。 「ここは…… 遊園地? な、何故、僕はこんな所に……」 何故、僕はこんな所にいるんだ? 着ている服も学ランだし。 しかも、何故か一人でコーヒーカップの上にのっている。 とりあえず僕は、直前まで何をしていたかを思い出す。 「確か、僕はヨモギの葉を口にして……」 ちょっと待て。 何で、そこから遊園地に飛ぶことがあるんだ? そもそも僕は、異世界に来ているんじゃあないのか? 余りにも不条理すぎる! 論理的じゃないぞッ! 「待てよ、この状況…… 覚えがあるッ!」 そうだ。コレは確か記憶にあった、赤ん坊のスタンド使い…… 「『デス・サーティーン』ッ!」 マズイッ! スタンドの出せない僕は、一般人となにも変わらない! 何とかして起きなくては! 僕は急ぎコーヒーカップから離れ、全体を広く見渡せる所に移る。 「ラリホー。何をやっているんだ、花京院ンンーーッ!?」 後ろから声が聞こえる。 しまった! もう追いつかれていたのか! 振り向くとそこには、記憶と寸分違わない、鎌を持った死神のヴィジョンを持つスタンドが一体。 無駄かもしれないが、僕は近くにあった木の枝を持って、精一杯の抵抗の意を示す。 「デス・サーティーン! 貴様、どうやってここにッ!」 「デス・サーティーン? 何をいっているんだお前は。ラリホー」 「とぼけるなッ!」 「ラリホ?」 目の前のデス・サーティーンは心底解らないといった様子で、首を傾ける。 ……もしかして、違うのか? いや、油断はするな。 「なんだか解らないが、俺はムラサキヨモギの精さ。ラリホー」 「ムラサキヨモギ?」 そういえば、僕が倒れる前に口にしたヨモギの名前が、そんな名前だったな。 目の前の、自称ムラサキヨモギの精は、変わらないペースで、口上を続ける。 「お前はこれから、炎髪灼眼の討ち手と優柔不断男と一緒に紅世の徒と戦ったり、 『宇宙人、未来人、超能力者を探し出して、一緒に遊ぶこと』が目的の団体に所属したり、 所構わずフラグを立てまくる、異能を消す男と一緒に、学園都市で不幸の避雷針をやったりするのさ。ラリホ~」 何を言ってるのか解らないが、かなりマズイ状況だ! 「さて、覚悟はいいかい? 俺は出来てる。ラリホー」 お前が覚悟してどうするんだ! 僕はそう、心の中で毒づいた。 しかし、スタンドの出せない僕には、為す術がない。 「うわああああああ! やめろッ、やめてくれッ!」 僕は持っている枝を必死で振り回す。 しかし抵抗むなしく、自称ムラサキヨモギの精は、僕の目の前まで迫ってきた。 万事休すか…… 僕はすっと、目を閉じ、歯を食いしばった。 しかし、来ると思っていた衝撃はなく、代わりに冷たい冷気が顔にかかった。 僕はゆっくり、目を開ける。 「ラグース・ウォータル・イス・イーサ・ハガラース」 「ウッガーッ!」 そこには、ツララに頭を打ち抜かれた、自称ムラサキヨモギの精がいた。 僕はそのツララが飛んできた方向を見る。 そこにはあの、青い髪のちびっ子が杖を構えて、こちらを見ていた。 「間に合った」 「えっと、君は?」 「本当のムラサキヨモギの精。はしばみ草の精も兼務している」 なんだか良く解らないが、とりあえず助かったのだろうか? 「さぁ、はやく起きて。才人やシエスタ達が待ってる」 目の前の少女の、そんな声を聞いて、再び僕の意識は遠くなっていったのだった。 「おい、花京院! しっかりしろよ! なぁ!」 「ノリアキさん、大丈夫ですか! ノリアキさん!」 才人とシエスタの声が聞こえる。 どうやら、二人で僕の身体を揺さぶっているらしい。 重たい瞼を開けると、そこは厨房だった。 ……戻ってきたんだな。 僕はゆっくりと、机に突っ伏していた身体を起こす。 「ああ、やっと起きたのかよ、この野郎!」 「大丈夫ですか?」 才人の顔の赤みが引いている。 どうやら僕は、酔いが抜けるぐらいの時間、ここで突っ伏していたようだ。 僕は二人に向き直る。 そして、右手を口元に持っていき、ありのままに今、起こったことを伝えた。 「あ、ありのまま、今、起こったことを話します! 『ヨモギを食べたと思ったら、生ゴーヤ並みに苦かった』 な、何を言っているのか解らないと思いますが、僕にも何が起こったのか解りませんでした。 舌がどうにか成りそうでした…… 草の味とか、生なんだから苦いのは当たり前とか、そんなちゃちなものでは、断じてありませんでした。 もっと恐ろしい苦みの片鱗を味わいました」 「か、花京院?」 「ノ、ノリアキさん?」 「いや~、どうなることかと思ったぜ」 「もう、二度と食べたくありません……」 ルイズの部屋への帰路。 僕らはあの後、すぐ厨房を後にした。 シエスタやマルトーさんが、心配そうにこちらの様子を見てくるので、非常に居辛いものがあった所為だが。 僕と才人は空を見上げる。 相変わらず、そこには二つの月。 「何か、ああも月がでかい面してると、すげぇ憎たらしいよな」 才人がそんなことを言い出した。 確かに、アレは僕らが異世界に来てしまったという、象徴でもあるんだと思うと、非常に憎たらしく感じる。 才人は何を思ったか、かがみ込んで石を拾う。 そして、何を思ったのか、その石を空に向かって思いっきり投げた。 「あ~、少しはすっきりしたな」 憂さ晴らしか。 気分転換には良いかもな。 僕も一つ、真似をして、空に向かって石を投げた。 僕の投げた石は綺麗な放物線を描き、ガンという、小気味のいい音が響かせる。 見ると、前方にいたギーシュに当たっていた。 「ギーシュ! どうしたのよ! ギーシュ!」 近くにいる金髪ロールの子が、がくがくとギーシュのマントをもって揺らしている。 どうやら何が起こったか、気づいていないようだ。 「やべぇ!」 「逃げますよ、才人」 「おう!」 僕らは足早に、ルイズ達の寮へと向かっていった。 階段を駆け上がって、僕らはルイズの部屋にたどり着く。 そういえば結局、僕の所為で、才人もルイズのことを放置していたらしい。 ルイズのことだ。 主人を不快にさせる使い魔と下僕には罰を与える等といって、また鞭を持っているに違いない。 僕らは覚悟して、部屋のドアに手をかける。 しかし、ドアが開かない。 どうやら鍵をかけているようだ。 「ああっ! 俺等の毛布!」 僕らの毛布と、昨日、屯所から貰った布団が放り出されているのを見て、才人が叫び声をあげた。 その声に反応して、部屋の中から声が聞こえる。 「あああああんた達を人間扱いした、私が間違っていたわ。授業の事だけじゃ飽きたらず、ご主人様の事まで放置して…… あんた達、今日から使い魔と下僕らしく、外で寝なさい」 どもっている。どうやらルイズは相当、怒っているようだ。 「部屋の外は、風が入ってくるから寒いんだが」 「きっと、夢の中のわたしが暖めてくれるわ」 才人が何とか部屋に入れないか、交渉するもばっさりと切り捨てられる。 とりつく島も無しだ。 しかし、それだけでこんなに怒るとは…… 夢の中で暖める? 何のことだ? 「才人。何やったんですか?」 「いやな、ちょっと夢の事でからかっただけだぜ?」 僕はまたか、と思い、手を顔に当てた。 才人はもう少し学習するべきだと思う。 頭を下げるのがいやなのは、僕も同じだが、何故虎の尾を踏む。 わざとか。わざとやっているのか。 沸々と沸いてくるぶつけようのない怒りを、何とかこらえて、僕は才人ととりあえずどうするかについて話し合う。 「で、どうするんです?」 「とりあえず、風呂に入る?」 廊下の空いた窓から、冷たい風が入ってくる。 「却下です。湯冷めをして、風邪を引くのがオチですから」 「じゃあ、一日中入っておくとか」 「のぼせますし、そんな薪の量何処にあるんです? 温度調節だって大変なんですよ?」 僕と才人は改めて、大きなため息をついた。 「仕方ない、このまま毛布にくるまって、朝が来るのを待ちましょう」 「それしかないのか……」 呪われろ! お前のゼロに明日などあるものか! 僕たちは、そんなルイズに対する呪詛を心の中で吐きながら、寒い夜を過ごすことになったのだった。 To be contenued……
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/974.html
第2章 前編 「Buongiorno!(おはようございます!)」 爽やかな朝、爽やかな挨拶を、爽やかな笑顔で、爽やかな使い魔が、御主人様へ申し上げる。 ……返事が無い。ただの屍(?のようだ。 「朝ですよ! 起きて下さい!私の可愛い御主人様!」 「…おーい。 …朝ですよー」 「早く起きないと食べちゃうぞー(性的な意味で)」 「……(まだ夢の中か? オイ)」 少しイラっときたが、我慢々々。これもコミュニケーションの一つだ。 『やりたい事をやりたい時にやる』 『”明日”のため”今日”我慢する』 『両方』やらなくちゃあならないってのが『人間』のつらいところだな。 大きな『矛盾』も、楽しめればそれで良し! とはいうものの、流石に無反応は面白くなく、ちょっとだけ悪戯することに決めた。 「朝ですよー」 プニ (お やわらかい…) 幸せそうに眠っている御主人様の頬をつつく。 「…うにゃ」 !? 「…朝ですぜー」 プニプニ 「…うにゃあ」 (こ、こりは!?) お も し ろ い ! 「朝朝朝ー」 プニプニプニ 「…うににゃあ」 (もう起きてんじゃねぇのか? これ…) でも反応が”おもしろい”ので、もっと続けることにした。 「右からつつく。 左からつつく。 つまり……挟み撃ちの形になるな」 プニー 「…ぷー…」 「あぶなァーい! 上から襲って来るッ!(小声)」 鼻を上からプニー 「…むー…」 (絶対起きてるし、絶対”わざと”だ…。 しかし…) 何だこの感情は? こう、心が満たされるというか… 癒されるというか… 自分に新たな嗜好が生まれ出る瞬間に戸惑う。 「うーん…」 (お? 流石に起きるか?) 寝返りをうっただけで、起きようとしない。 「…やれやれだぜ?」 両手の人差し指を、御主人様の頬へ近づける。 「オラ オラ オラ オラ」 プニプニプニプニプニプニ…… 「…UUU、UREEYYYYYYYYYッ!!」 まるで、人間を辞めたかのような咆哮でベッドから飛び起きるルイズ。 「何すんのよ! もっと普通に起こしなさいよ!」 両手で頬をさすりながら、使い魔を怒鳴る。 「スイマセェェン……。 余りにも”可愛らしい”寝顔だったのでつい……」 遊んでしまいました。 「……ま、まあ、素直に謝ったから今回は許してあげる! でも、次はちゃんと起こしなさい!」 ほ~んの少しだけ嬉しそうな顔で、簡単に許すルイズ。 …もしかして「可愛らしい」って言ったから? だとしたら…。 なんて不憫な子……。 オレがもっと褒めてあげないと。 「可愛い」程度で満足したらもったいない。 この娘は御世辞抜きで可愛いのだから。 もっと輝いてもらうためには、少々のことで満足してはイカン! 『自信』を持つことは、強く美しく生きていくためには欠かせないのだ。…自信過剰は困るが。 わずか1秒弱で御主人様への感想と決意を固めたスクアーロだった。 そんな使い魔を尻目に、背伸びをして目を覚ましているルイズ。 「ウーン…… そんじゃ、服」 椅子にかかった制服を、ルイズへ手渡す。 ネグリジェを脱ごうと、裾を掴んだ。そこで動きが止まる。 「…あっち向いてなさい」 スクアーロに命令する。 ……恥ずかしくないんじゃ? 「いいから! あっち向いてて!」 「へいへい」 「返事は『ハイ』! 次、下着! クローゼットの一番下の引き出し!」 言われた通り、引き出しを開ける。 その中から”今日の気分”で選び出すスクアーロ。 (色気のあるヤツがないな…) 少しションボリしながら、選び終える。 「とっとと渡しなさい。 こっちを見ずに」 「相手を見ずに、物を渡すのはマナー違反だと…」 「うるさい」 しぶしぶ下着を投げ渡し、次の指示を仰ぐ。 「着せましょうか? 服」 「…いいわ。 自分でやる」 「そんな! フツー、使い魔とか召使いに手伝わせるだろ!?」 「自分を知れ… そんなオイシイ話が…… あると思うのか? おまえの様な(スケベな)使い魔に」 「…ヤッダーバァァァ…」 声にもならない声で、心の叫び(?をゴミ箱になげかけるスクアーロであった。 部屋を出ると、赤い髪の”bella donna ベッラ ドンナ”がいた。 bella donna(伊:美人) 特に胸がグンバツな美女が。 「おはよう。ルイズ」 ルイズは顔をしかめると、嫌そうに挨拶を返した。 「おはよう。キュルケ」 「あんたの使い魔って、これ?」 何故か自分の隣にいるスクアーロを指差す。 スクアーロは、手をキュルケの腰へまわしつつ、キュルケの手にキスをする。 「Buongiorno! あなたほどの『炎のように激しく、熱を持った美しさ』は初めてです。 お嬢さん♪」 「あら? お上手ね。 わかってるじゃない?あんたの使い魔さん♪」 「ダァッシャッ!!」 キュルケが言い終えると同時に、使い魔へA・猪○ばりの延髄蹴りを決めるルイズ。 さん付けにランクアップしたことを喜ぶ暇も無く、床を泳ぐ鮫。 「あらあら」 「ごご、ごめんなさいね? まだ躾がなってなくて。 すす、すぐに床に寝てしまうのよ。困ったものだわ」 肩を小刻みに震わせながら、使い魔に止めを刺す寸前のルイズ。 どこと無く全身にオーラを纏っているような……。 「だけど、『平民』を使い魔にするなんて、やるじゃない”ゼロ”のルイズ?」 怒りのスーパーモード状態のルイズを目の前にしても、動じることも無く挑発するキュルケ。 (後頭部とか首はヤバイだろ。常識的に考えて…) 瞬時に当たり所をずらして、即死だけは防いだスクアーロ。だが当然、床の上に寝ている。 「でも、どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ~。 フレイムー」 のそのそと、赤い何かがキュルケの部屋と思われるドアから出てくる。 「! …これって、サラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねる。 そうよー。火トカゲよー。と自慢するキュルケの足元で、フレイムと呼ばれたサラマンダーが行儀良くしている。 「…Buongiorno……。 使い魔どうし仲良くやろうや」 「きゅるきゅる…… きゅるきゅる?」 「…ありがとよ。 元気いっぱいだぜ?」 なんとなくだが、意思疎通に成功したことに満足するスクアーロ。 フレイムとの挨拶を終えた鮫はぼんやりと、タイプの違う2人の美女のおしゃべり(?を聞く。 「―――あなた、お名前は?」 御主人様同士の会話が終わり、ゆっくりと起き上がろうする平民使い魔へ問いかける。 「スクアーロ。 オレのクニで”鮫”って意味だ」 「すくあーろ? 珍しい名前ね」 「だろうな」 「ま、よろしくね。使い魔さん。 じゃあ、お先にし・トゥ・れいィィィ~」 …キュルケがとっびきりのギャグを披露しながらいなくなると、ルイズは拳を握り締めた。 「ぐーやーじ~~! (さっきの”し・トゥ・れいィ”も”ゼロ”と”れい”をかけて馬鹿にしてんだわ!)」 「別にいいじゃないか。 気にしたらイカンよ?」 「よくな~いッ! メイジの実力をはかるには使い魔見ろって言われるぐらいよ!」 「『平民』と『サラマンダー』では比較にならない?」 「当然でしょ! 人間同士でいえば『平民』と『貴族』ぐらい違うわよ!」 「……(他の『パッショーネ』のメンバーなら、ぶっ飛ばされてんぞ?)」 未だ興奮冷めやらぬルイズに問う。 「なあ、さっき話してた微熱とかゼロって『二つ名』ってやつか?」 「……そうよ」 「ふーん」 「……聞かないの?」 「何を?」 「二つ名の由来」 「君が教えてくれるなら」 「……。 ……行くわよ」 (やっぱり。さっきの会話からじゃあ、あんまりいい意味じゃなさそうだよな) ご機嫌ナナメの御主人様の後を、さっきのダメージの後遺症か、ナナメに歩きながらついて行く。 (やっぱり自信を持たせないと。) この娘には色々頑張ってもらわなければ…。 帰る方法を調べてもらうっていう大事な仕事があるからな。 それに何より……。 「美人は笑顔が一番ッ! これは真理だッ!」 ……今の鮫には親衛隊だった頃の獰猛さは全く感じられない。 ……異性に対する貪欲さは増しているが……。 「The Story of the "Clash and Zero"」 第2章 ゼロのルイズッ! 前編終了 To Be Continued ==
https://w.atwiki.jp/heiligeskamm/pages/48.html
天空星 ゼロ 忘れ去られし村の焼き討ち後、逃走中のススム達と出会うはぐれグリフォン。 人間不信に陥っていたが、ススムとの触れ合いから彼の相棒となる事を志願する。 ススムやヒューゴとバディを組んでの【ライド・オン】攻撃を得意としている。 彼の宿星となる【天空星】は熟考が苦手な性格をしており、その短気さが時に命取りとなる。 他人を疑いがちでもあるが、一度信じた者に対しては生涯守り抜く義理堅い性格である。 性別:男 種族:グリフォン 年齢:5歳 身長:3m 出身:?(風吹く谷) 戦闘スタイル:ツメ 攻撃レンジ:S 陸地戦パラメータ:特殊 水上戦パラメータ:特殊 属性:風 紋章(額):光る風の紋章 紋章(右手):なし 紋章(左手):なし 【天コウ星三十六星】へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/139.html
「……は?今なんて?」 「だから私のダーリンがギーシュと決闘するって言ったのよ」 「そういう事じゃなくて何で貴方の新しいダーリンとギーシュが決闘する事を私に報告するのかしら?ツェルプストー」 「そりゃあダーリンが貴方の使い魔だからじゃないの……」 どこか遠くを見るような目でそう言い放つキュルケに対し (何?さっき打たれたばかりなのに惚れたの?キュルケってもしかしてドM?) と思い、自分の友人がそっち方面であったのかもしれないと思い多少ドン引く が、アブノーマル認定されかかっている事も知らずにキュルケが多少熱を帯びた言葉を続ける。 「そりゃあ急に打たれた時は驚いたわ…今までの彼は私自身や私の家を目当てで優しくしてくれたり甘い事を言ってくれた人ばかり… でも彼は違ったわ…貴族でもないのに私を対等に扱ってくれた初めての人よ…これが燃えられずしてどうするのよ!ヴァリエールッ!!」 もう微熱どころかイタリア・ヴォルガノ島火山より燃え上がっているご様子。 そして完全に放置食らってるルイズ、半分意識が飛んでいた。 「……………って決闘ぉ~~~~!?何プロシュートが?何でギーシュと!?」 そして、数秒送れて肝心の本題に気付く。 「彼プロシュートって言うの…ステキな名前ね…」 完全に自分の世界へ入っているキュルケ嬢。なんかもうルイズの目に『ラリホ~』と言いながら周りを浮かぶ趣味の悪いピエロが見える。 「早くあいつを止めないと大変な事になる…!止めなきゃ!」 (ギャラリーが出来きるであろう決闘で召喚した時にあいつが使った妙な能力を使われたら大惨事になる) という事からプロシュートを止めるという事だったがもう一人の方は 「いいじゃない…平民が勝てないと分かっているメイジに挑む…燃えるわぁ~」 などとキュルケがのたまう。 (駄目だこいつ……!はやく何とかしないと……!!) 一瞬だがそういう思考が頭をよぎるが『決闘』という重大事にそれを後回しにする。 半分トリップキメているかのようなキュルケを後にしプロシュートを探す。 居た。というか凄まじく目立っているためほとんど探す必要も無かった。 ちょ、ちょっと!ギーシュと決闘するってどういう事!?」 「仕掛けてきたのはヤツの方だぜ」 (マズイ…!目が本気だ…!) 「人が大勢居る場所であんな物騒な事しないでって言ったばかりじゃない!」 「誰がアレを使うと言った?対処法がバレると厄介なんでな、使うつもりはねぇ」 授業をロクに聞いてはいなかったが水系統の魔法で氷が作り出せるという事は聞いていた。 グレイトフル・デッドの老化に対して唯一有効な手段である「体温を下げる」 生徒とはいえあの大人数の前で広域老化攻撃を使えばそれがバレる可能性がある。 後の事も考えればそれは避けたいとこだ。 「それじゃあアンタに勝ち目なんてあるわけないじゃない!今すぐギーシュに謝ってきて!」 「無駄だな、ヤツは完全にプッツンキてる。例えオメーが謝ったところでどうにかなるもんでもねぇ」 「ああもう、それじゃ逃げなさい!私から何とかうまく言っといてあげるから!」 「ヤツはオレに決闘を挑むという覚悟があってやってるんだぜ? 一時身を隠したとしても必ず追ってくるだろうよ。だからこっちが先に『やられる前にやる』んじゃあねーかッ!」 プロシュートがそう言い放ちルイズをその場に残し広場に向かう。 「……怪我じゃすまないかもしれないのにどうするのよ!」 だが、ルイズが思い違っている事が三つある。 一つは「グレイトフル・デッドというスタンドの存在」 二つは「プロシュートが一級の暗殺者」 そして三つめ「プロシュートにとっての『やる』は『殺る』」であった事… そして『ヴェストリの広場』 「遅かったじゃないか… 逃げ出してしまってたものかと思っていたよもっとも、逃げたところで無駄なんだけどね!」 「殴られた後が顔に出てるぜ?まぁその方が人気が出そうだがな」 「ぐッ…!平民が貴族を馬鹿にした報い受けさせてやるッ! 僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまい!」 ギーシュが薔薇の造花を振るうと花びらが一枚離れ金属製の人形が一体出現する。 「青銅のゴーレム『ワルキューレ』僕が青銅のギーシュと呼ばれている由縁だッ!」 「その名前ならさっき頭から香水をブチ撒けられた時に聞いたな」 「いつまで減らず口を…!まぁいい、この一体だけで片付けてあげるよ!」 ワルキューレが猛然とプロシュートに突っ込んでいく。 だがプロシュートは動かない。しかし目だけはワルキューレを凝視している。 ワルキューレとプロシュートの距離が2メートルを切りワルキューレが拳を繰り出す。 だが拳が目標に当たりそれを砕く瞬間拳の軌道が瞬時に変わった。 「何ッ!?」 「今の見たか!?」 「ワルキューレの拳の軌道が急に変わったぞ!」 そうギャラリーが騒いでいる間にもワルキューレは両の拳を繰り出すが全て当たる直前に軌道を曲げられてしまう。 「こいつ…!平民のはずじゃないのか!?」 「フン…ノロいな、その程度のスピードじゃあスティッキィ・フィンガースに遠く及ばねー」 自分が最後に戦ったスタンドの名を出しながら性能をS・Fと比較する。 「確かに人間と比べては優れちゃあいるがそれだけだな、特徴としては堅さぐらいか」 そう言い終えた瞬間――ワルキューレが腕と脚と全て弾けさせ砕けた。 「確かに正面装甲は堅いが…関節部はそうでもねーな」 「な…僕のワルキューレに何をした…? 何をしたと聞いているんだ!答えろォォォオオ!!」 「…………」 無言でギーシュを見据えるプロシュート。だが自慢のワルキューレを破壊されたギーシュはそれを挑発と受け取る。 「いいだろう…言いたくないのならそれでいい!嫌でも言いたくなるようにしてやるさ!」 薔薇の造花を振るい6枚の花びらを舞わせ残り全てを出現させる。 ――ギーシュが平民相手に本気になった。そう思った観客が騒ぎ出す (ちッ…六体か) プロシュートのグレイトフル・デッドはそれ自体の拳の射程距離だけなら近距離パワー型に属する。 だがヴェネチア超特急クラスの列車丸ごとをカバーできる老化の射程距離。 これが他の近距離型スタンドとグレイトフル・デッドの差だ。 パワーそのものは近距離型に劣るとはいえある程度のものを有するもののスピードと精密動作性が致命的に劣っている。 それを埋める為の老化だが今回はそれを使っていない。―――つまり ワルキューレの内三体がプロシュートを襲う。 さっきと同じように拳の軌道が変わる、観客達はそう思った。だが結果は違っていた。 ズドォォオオ 一体ワルキューレが吹っ飛ぶ、だが残り二体がその隙を襲う。 片方の攻撃を弾くが、もう片方は間に合わない。 ボゴォ 「うごォっ!」 横からの攻撃を受け吹っ飛ぶ。そしてそれを見たギーシュが勝利を確信したかのように勝ち誇る。 「君のその妙な能力はワルキューレ一体には抗えても複数体だと無理みたいだね その弱点が分かったからには次は残り全てでやらせてもらうッ!土下座するならいまのうちだッ!」 (骨には問題ねぇが…内臓を少しやられたみてぇだな) 立ち上がりギーシュに向き直る、だがその口からは血が出ていた。 「フン、血ヘド何て吐いて神聖な決闘を何だと思っているんだい? まぁ使い魔だけあって少しだけ妙な力があるようだが魔法を使えるメイジに勝てるはずないのさ!」 だが次のプロシュートの言葉はギーシュにとって意外だったッ! 「ハァー…ハァー…それがどうした?」 「何だって…?」 「それがどうしたと言ったんだ」 「この後に及んで強がりかい?みっともないねッ!」 だがそれに構わず言葉を続ける。 「確かに魔法ってのはスゲーもんだ、オレだってそう思う だがなッ!オレが居た場所には空気そのものを凍らせるヤツやあらゆる物体を切断できるヤツなんてのが居るッ!」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ (何だこいつ…!?周りの空気が急に変わったぞ!) 「オレ達チームはなッ!常にそういう連中を相手にしてきているッ! オメーらみてーなマンモーニが使う薄っぺらい魔法なんかと一緒にするんじゃあねぇッ!」 「…ハッタリのつもりかい?だとしたらメイジも甘く見られたものだ。いいだろう!もう手加減なんてのは無しだッ!」 ギーシュが武器を精製しそれぞれのワルキューレに武器を取らせる。 どれもこれもマトモに受ければ良くて重症、悪ければ死に至るものばかりだ。 「後悔する時間も与えないッ!」 残った6体のワルキューレをプロシュートを囲むようにして布陣させる。これでもう逃げ道は無い。 ギーシュの号令を待つように囲むワルキューレ達、観客の誰が見てもギーシュの勝ちは明らかだと思っている。 ルイズがそれを止めようと観客達を押しのけ間に割って入ろうとする。だが遅かった。 「行けッ!ワルキューレ!!」 そう聞こえた瞬間ルイズはその場に立ち竦み己の使い魔がなぶり殺しにされる光景が脳裏に浮かび――倒れた。 その声を合図としプロシュート目掛けワルキューレが殺到する。 だがプロシュートが取った行動は実にッ!意外だったッ! 普通4方から囲まれているなら身を守るのが当然だッ!だがプロシュートは逆に…… 『思いっきり突っ込んだッ!』 一体のワルキューレ目掛け猛然と突っ込む。その先にはギーシュが居る。 「一体だけなら対処はわけねぇからなッ!」 「ば、バカなッ…!」 固まって動かれればワルキューレの層を突破できない、だから自分を囲ませるように仕向けた。 そうして包囲網が縮まる前に一点突破を仕掛ける。それが狙いだ。 グレイトフル・デッドでワルキューレを投げ飛ばす 壊すのは時間の無駄と判断しての事だ。 「くそぉ…来るなァァァァアアア!!」 ギーシュにさっきまでのような余裕はスデに無い。狼狽しながらも魔法を使うべく杖をプロシュートに向ける。 だが当たらない、ギーシュがいくら魔法を撃っても一発たりとも当たらない。 拳銃と同じだ、落ち着いて心を決めていなければ魔法といえども当たるはずはなかった。 後ろから6体のワルキューレを引き連れたプロシュートが迫り薔薇の杖をグレイトフル・デッドでヘシ折った。 「うぁ……あ…ま、参った…」 貴族が平民に負けた、誰もがそう思った。そしてこの決闘が終わったと思った。 否、実は終わってなどいない(古谷 徹の声で) どこからか『倍プッシュだ』というような声が聞こえたが多分幻聴だ。 「参った…そんな言葉は使う必要がねーんだ… なぜならオレやオレ達の仲間が敵と戦った時の決着は」 次の言葉で観客達のほぼ全てが凍りつく 「どちらかが死んじまってるからだッ!だから使う必要がねェーーーーッ! オメーもそうだよなァ~~~~『決闘』を挑んできたんなら…分かるか?オレの言ってる事…え?」 「ひぃ…!こ…殺される…助け…」 だがその言葉は最後まで言えない、グレイトフル・デッドが首を掴みギーシュの体が中に浮く。 「ギ、ギーシュが浮いたぞ!」 「いや…違う!見ろ、首を何かに『掴まれて』いるッ!」 グレイトフル・デッドは見物人達には見えないが何かに首を掴まれている跡だけはハッキリと見えた。 ズキュン! 「何だァーーーーーッ!あれはァーーーーッ!!」 観客達が騒ぎだす。当然だ、ギーシュがあっという間に老人の姿になったのだから…! 「うわぁぁぁぁ!やっぱり…あれは夢じゃあなかったんだッ!『ゼロ』の呼んだ使い魔は…悪魔か何かなんだァーーーーッ!」 そう叫ぶのは最初に巻き込まれた連中だ。それを皮切りに他の者が次々と騒ぎ出す。 ドザァァア ほとんどミイラと化したギーシュが地面に崩れ落ち、周囲から悲鳴や怒号が上がる。 中にはプロシュートに杖を向けている物さえ居る。 だがプロシュートはあくまで冷静に言い放つッ! 「これぐらいの事で騒ぐんじゃあねぇッ!オレがいた世界ではな! 決闘を仕掛けて『参った』なんていう負け犬は居ねーんだからな…」 ピクリとも動かない元ギーシュの首に足を乗せ―― 「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!」 その言葉と同時に広場に乾いた音が鳴り響びく。この場を見ていない者であれば枯れ木を踏んだかのよに聞こえたであろう。 そして、その瞬間その場に居た者達は理解をする。 仕掛けられた決闘とはいえ貴族を―メイジを顔色一つ変えることなく滅せる者がただの平民ではないという事を。 ギーシュ・ド・グラモン―死亡(頚椎骨折) 二つ名 「青銅」 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/battler/pages/11173.html
「暇ならちょっと付き合えよ。俺とイイことしようぜ…」 「ファイアーエムブレムif」に登場するシーフ。 暗夜王国の王子レオンに仕える元盗賊で、 暗殺や窃盗の技術は暗夜王国でも指折り。 相手が苦しむ姿を見るのが好きなサディスト。 その意味深かつ卑猥な言動は今作のCERO判定を上げたのは言うまでもない。 軍の中で一番、月を見るのが好き。 ステータス 14/12/24/50 のスピード。 低いHPと攻撃、高い魔防と速さを持つゼロは 堅守高速よりのスピードタイプにしました。 攻撃を避けて、会心の一撃で敵を天国にイかせます。 戦闘時のセリフ 攻撃:苦しむ姿を見せてくれ… 回避:イイねぇ、その目… 被弾:ナニすんだ…! 会心:イくぜ… 勝利:ふっ…、イッちまったか。 敗北:ほどほどで満足することだな… 逃走:いつも上手くイケるわけじゃない…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1765.html
10話 後編 勢いを盛り返したキュルケとタバサがラングラーを追い詰める。 「いくわよ、タバサ!」 キュルケの声とともに、複数のファイア・ボールがラングラーに殺到するッ! それと同時にラングラーは鉄クズの弾丸を二人に向けて放つが、 タバサのウィンド・ブレイクがそれらを全て元の軌道からそらす。 二人を貫くはずだった鉄クズはギリギリのところで二人には当たらず、 その後ろの壁に突き刺さる。 そしてラングラーも、自分に向かってきたファイア・ボールは 全て唾を吐きかけた掌で消滅させる。 互いの技術と能力が、互いの攻撃を無力化する。 このままでは、押し込まれかねない。 ラングラーはそう思った。 相手の小娘メイジは二対一で戦うことで精神力の磨り減りを遅くしている。 しかしさっきから鉄クズを撃ちまくっている自分は、残弾にあまり余裕がない。 チョロい仕事だと思って補給二回分の鉄クズしか持ってこなかったのが、 この状況ではかなり痛い。 一回目の補給は既にしてしまったので、次の補給が最後になる。 今までのようにハイペースで撃ちまくることは出来ない。 しかし――手数を減らす事はできない あの青髪の小娘。 あれがいる限り、こちらの攻撃が直撃する事は望めない。 加えて今はこっちの攻撃を防御するのに徹してるからいいが、 こっちの攻撃の度合いが弱まればすぐ攻撃に参加してくるだろう。 接近戦に持ち込む、というのも考えたがすぐに止めた。 そんなことをしたら確実にホワイトスネイクが動く。 赤髪の小娘の炎を消しつつ、 JJFの射撃をほぼ凌ぎきったホワイトスネイクと接近戦で立ち回れるほど JJFは器用じゃないし、自分もそうじゃない。 このままでは、詰まれる。 その焦りが、ラングラーに一つの決断をさせた。 この二人の小娘を、カラカラのミイラにしてやると。 こんな小娘相手に「これ」をやるのは腹立たしいが、 やらずに負けて死ぬよりはずっとマシだ。 そしてキュルケのファイア・ボールの弾幕が一瞬途切れた瞬間、 ラングラーはJJFの両腕のリングを開いた。 鉄クズの弾幕が途切れる。 それと同時にタバサが素早くルーンを唱え、身の丈より長い杖を軽く振る。 ラングラーがJJFの腕のリングに唾を素早く吐き入れたのは、 それのコンマ一秒、二秒ほど後。 直後、タバサのエア・ハンマーがラングラーに襲い掛かる。 ゴォアッ! 唸りを上げて自分に迫る風圧の塊をラングラーはモロに食らい、 壁に叩きつけられる。 ドグシャァッ! 「があッ!」 自分の体に走った衝撃と鈍痛にラングラーが呻いた。 だが顔を苦悶に歪めながらも、ラングラーの口は笑みの形に歪んでいた。 JJFの腕のリングは既に閉じ、高速で回転していた。 そのリングの中で、先ほど吐き入れられた唾は拡散、分散し、 リングの中の全ての鉄クズに付着した。 無重力の世界を生み、さらに真空の世界を作り出すラングラーの唾。 それが、弾丸として発射される鉄クズをコーティングした。 この世界でラングラーが編み出した、 JJFの究極にして最悪の戦術が始まった。 「ようやく・・・追い詰めたってとこかしら?」 タバサのエア・ハンマーで確実なダメージを受けて膝を突くラングラーを見て、 キュルケはそう呟いた。 「まだ油断できない」 タバサはそれを制するように言い、杖をラングラーに向ける。 キュルケはそれに頷くと、タバサと同様に杖を構える。 二人とも残りの精神力にはあまり余裕が無い。 決着をつけるなら、次しかなかった。 そのときだ。 「しかし・・・お前らは・・・よく頑張ったよ」 ラングラーが二人に声をかけた。 エア・ハンマーをまともに食らった割には、その声に張りがあった。 「・・・どういう意味よ?」 警戒しつつ、キュルケが答える。 「まだハタチにもならねえってのに・・・トライアングルで・・・ オレとここまで・・・やりあえるとはな・・・恐れ入ったよ」 「だから何が言いたいのよ!?」 明らかに追い詰められた状況でありながらも余裕を崩さないラングラーに、 キュルケは得体の知れない恐怖を感じた。 タバサも口こそ開かなかったが、キュルケと同様にそれを感じていた。 「だがな・・・お前らは・・・これから詰まれるんだぜッ!」 瞬間、JJFがリングに残る全ての鉄クズを、部屋中に無差別に撃ち放った。 ドドドドドドドドドドドッ! 放たれた鉄クズは、あるものはキュルケ、タバサ、そしてルイズへと向かい、 またあるものは壁に突き刺さり、またあるものは壁を跳ねた。 タバサは自分たちの方向へ飛んでくるものを正確に見極め、 ウィンド・ブレイクで射線をずらす。 ルイズへと向かうものは、ホワイトスネイクがルイズのベッドをひっくり返し、 それを盾にしてガードした。 タバサはこの防御で、これでラングラーの攻撃が終わったと思った。 自分の方に向かってきた鉄クズ全てに対処しきったからだ。 だが――ラングラーの攻撃はまだ終わっていなかった。 ホワイトスネイクにはそれが分かっていた。 部屋全体にばら撒くような射撃。 ホワイトスネイクもこれでダメージを受けた。 この攻撃における、ラングラーの狙いは―― 「ソイツハ『跳弾』ダ! 警戒シロ!」 ホワイトスネイクが二人に向かって叫ぶ。 だが、それは遅すぎた。 いや、仮に遅くなかったとしてもこの世界には「跳弾」などという言葉は無い。 故にタバサがその言葉の意味を理解し、正確な防御に移る事は不可能だった。 ドシュシュシュシュシュシュッ! 直後、キュルケとタバサは全身に鉄クズの銃撃を受けた。 同時に二人の体から鮮血が飛び散る。 「がはっ・・・・・・」 「っ・・・く・・・・・・」 呻き声を上げながら崩れ落ちる二人。 「キュルケ! タバサ!」 ルイズが悲鳴を上げる。 「そんな・・・・・・なんで・・・・・・」 「『跳弾』ダ。鉄クズヲ撃ツ角度ヲ調節シ、 壁ヤ天井デ鉄クズノ弾丸ガ軌道ヲ変エルヨウニシタノダ」 「な、なによそれ・・・弾丸が壁とか天井とかで跳ね返って、 それがキュルケたちを攻撃したの? そんなの、ありえないわよ!」 「ダガ現実トシテ二人ハ銃撃ヲ食ラッタ。 ソシテ私モ、先程ソレデダメージヲ受ケテイル」 「そんな・・・・・・」 ホワイトスネイクの言葉に、打ちひしがれるルイズ。 「その通り・・・・・・だ。 そして今の弾丸・・・ただ身体に・・・穴が開くだけじゃあ・・・ない。 もっと・・・・・・面白く・・・なる」 「面白クナル・・・ダト?」 「そうだ・・・・・・見ていろ・・・・・・。 奴らの血で、この床と天井に真っ赤な水彩画を描いてやるぞ・・・」 場所は変わってまたトリステイン魔法学院の校庭。 ある者は命がけで戦い、ある者は盗みを働こうとするこの日の夜。 そんな夜に、二人の男女が校庭を歩いていた。 少女の方の名前はモンモランシー。 二つ名は「香水」。 そして一週間前に、恋人のギーシュに二股かけられた本人だ。 そして男の方は―― 「ああ、モンモランシー! 君は本当に美しいよ! 天高く輝くあの双月も、君の前ではその美しさが霞んでしまうほどに! いや・・・きっと彼らもわかっているんだ。 どれだけ輝こうとも君の美しさには敵わないってね。 だからああして輝きを弱めて、君の美しさを引き立てているのさ! きっとそうだよ! 僕の愛しいモンモランシー!」 …一週間前、モンモランシーがいながら二股をかけた、ギーシュその人であった。 そもそも何故最悪な関係に陥っていたはずの二人がこうして一緒に歩いているのか、それを説明せねばなるまい。 事の発端はギーシュがモンモランシーを夜の散歩の誘ったことであった。 ギーシュは二股かけてたことがバレて傍に女の子がいなくなった状態が一週間も続いていた。 それで寂しくなったからモンモランシーに泣きついたのだ。 だが実際に傍に女の子がいなくなる、という状況に陥って、真っ先にモンモランシーのところに来る辺り、 ギーシュとしての本命はモンモランシーなのだろう。多分。 浮気ばっかりしてるけど、多分そうに違いない。多分。 そしてモンモランシーの方も、それまではホワイトスネイクとの決闘で死に掛けたギーシュを心配はしたものの、 二股をかけられたことが思い出されて、あまりギーシュとは一緒にいたくない気分だった。 だが「一週間経ったから許してあげようか」という気持ちと、 やはりギーシュに対するまだ捨てきれない気持ちがあって、夜の散歩を了承した。 そしてさっきからもう10分もの間、ギーシュの歯が浮くようなお世辞をノンストップで聞き続けているのだ。 普通の女の子なら耳が痛くなってくるようなお世辞の数々だが、 モンモランシーには、むしろそれが気分がよく感じられた。 モンモランシーはおだてに弱いタイプだった。 だからこそ、ギーシュが他の女の子にフラフラと近づいて そのままお近づきになってしまうのをその時こそは怒っても、 そのうちすぐに許してしまうのだった。 二股駆けるギーシュがダメダメなのは言うまでも無いことだが、 モンモランシーも何だかんだでダメだった。 でもそうだからこそ、似合いのカップルなのかもしれないが。 ひたすらモンモランシーに愛の言葉を重ねるギーシュ。 それを頬を紅潮させながら聞くモンモランシー。 二人はまだ知らない。 今この瞬間も、この学院の中で死闘が続いていることを。 「くぅっ・・・・・・タバサ・・・大丈夫?」 「・・・大丈夫。まだ、やれる」 「ウソ・・・でしょ、それ・・・。 ギリギリのところで使えた魔法を、殆どあたしを守るために・・・・・・」 「・・・・・・大丈夫、だから・・・・・・」 そう言うタバサの顔は青ざめている。 無理も無い。 タバサが先ほどの攻撃で受けた傷は、鉄クズの直撃が右足に3つ、右腕に2つ。 鉄クズのかすり傷が、脇腹に1つ、肩に1つ。 また、キュルケは鉄クズの直撃が左足に1つ、左腕に1つ。 それのかすり傷が左大腿に一つ、頭に一つ傷が出来ている。 ラングラーの射撃が二人を襲う直前、タバサはウィンド・ブレイクを使っていた。 しかしそれは、魔力を殆ど込める間もなかった弱弱しいものだった。 にもかかわらず、タバサはそれの殆どをキュルケを守るために使った。 そのため彼女が受けたダメージはキュルケのそれよりも、 ずっと多く、そして深いものになったのだ。 傷の激痛で奪われそうになる意識を必死に留めながら、 タバサは思考を回転させる。 このままではまずい。 あの男・・・こちらが思っていたよりも遥かに強かった。 まさか、天井や壁で撃った鉄クズを反射させて、 想定外の方向からこちらを狙うなんて。 さっきのエア・ハンマーでダメージを受けたように見えたのは演技だったのか、 それともダメージを押してあの攻撃を仕掛けてきたか。 いずれにしても、今度は完全にこちらが追い詰められてしまった。 もう一度あの射撃を仕掛けられでも、今の自分ではそれを防御出来ない。 そう考えていると、ふと自分の体に奇妙な違和感を感じた。 体が、軽い。 まるで風に巻き上げられた落ち葉のように、まるで自分の体に重みを感じない。 さっきまで、あの男から受けた傷の激痛で体が鉛のように重かったのに・・・。 いや、違う! 「軽く感じている」などという程度ではない。 自分の体が浮いている! 風も無いのに、何かの力が働いているでも無いのに、 自分の体が宙に浮き上がっている! いや、そればかりではない。 手や足を動かすたびに体がグルグルと回転し、重心が定まらない! これは、一体。 「タ、タバサ・・・こ、これ!」 声がした方を見ると、キュルケの身体も宙に浮き上がり、空中で二転三転している。 一体何が起きた? さっきの弾丸に、何か特別な魔法でも仕掛けたのか? でもこんなことができる魔法は、系統魔法の中には無い。 ならば、こいつが使っているのは――。 「エルフの先住魔法・・・か?」 突然タバサに、ラングラーから声がかかった。 「オレと戦ったものは・・・皆・・・そう言う。 先住の魔法・・・エルフの魔法・・・とな。 当然だ・・・火の魔法・・・風の魔法は・・・使うことすら出来ず・・・ 土の魔法・・・水の魔法は・・・まともなコントロールさえ・・・出来ない。 このオレが・・・・・・『魔法殺し』と・・・呼ばれるのは、そのためだ。 だが・・・オレが使うのは・・・そんなものではない。 それらより強力で・・・それらより凶悪なものだ・・・。 その力で殺されることを・・・誇りに思うがいい・・・・・・」 先住の魔法ではない? だとしたら、一体何がこれを引き起こしている? 考えても考えても、自分に起こったこの現象が説明できない。 とにかく自分の体を固定しなければ。 そう思い、杖を振ってレビテーションを唱え始める。 一体どういう原理で浮き上がっているのかは不明だが、 レビテーションなら身体を魔法で浮かせ、身体を空中に固定できるはずだ。 そう判断してのことだった。 そして、状況が変化したのはその瞬間だった。 傷口から流れ出ていた血の勢いが、突然強くなった。 まるで傷口から血が噴出すように、溢れ出るように流血し始めた。 そして次第にそれすらも通り越し、瞬く間に流血の勢いは強くなり、 まるで噴水のように傷口から出血しているッ! 「こ・・・これは・・・・・・」 「・・・・・・」 自分の身に起こった現象に呆然とするキュルケ。 そして自分の体から血が吹き出るという現実に驚愕したのはタバサも同じだったが、 風のメイジであった彼女にはそれ以上のことが理解できた。 自分の周りから、極端に空気が少なくなっている。 それに呼吸もしにくくなっている。 このままでは窒息してしまう。 それ以前に全身の血液がなくなって、干からびてしまう! どうすれば、どうすればこの状況から抜け出せる! 自分はまだ、死ぬわけにはいかないのに・・・・・・。 そしてその様子を、ルイズも見ていた。 ルイズは、自分を責めていた。 何も出来ないばっかりに守られて、 それで守ってくれる人が死にかけているのに、それでも何も出来ない自分を。 守られていながら、助けることさえ出来ない自分を。 自分が水のメイジだったなら、二人を治療できた。 火や風のメイジだったなら、アイツと戦えた。 土のメイジだったなら、ゴーレムの一つでも錬金して時間稼ぎが出来た。 なのに自分はそのどれでもない。 自分は「ゼロ」だ。 何の魔法も使えない、役立たずの「ゼロ」。 一週間前のギーシュとの決闘は、自分に何か光が見えたように思えた。 爆発しか起きない「ゼロ」の自分でも、 役立たずの「ゼロ」じゃないんだと思えた。 だが現実は違った。 結局自分は何も出来ない、役立たずの「ゼロ」だった。 自分を助けてくれた人が窮地に陥っても、 それに何の助けも出せない「ゼロ」だった。 ルイズにはそれがどうにも許せなくて、そして悔しかった。 悔しさで涙がこぼれそうになった、その時。 「マスター」 自分の前に立っているホワイトスネイクから声がかけられた。 顔はこちらには向いていない。 「・・・なによ。ホワイトスネイク」 こぼれそうになった涙を拭って、ルイズは不機嫌に聞こえるように答える。 「アノ二人ノタメニ命ヲ賭ケラレルカ?」 「・・・当たり前よ。何でそんなこと聞くのよ」 「今アノ現象ハ、アノ二人ヲ中心ニ起コッテイル。 ソシテ二人ヲ助ケルニハ、マスターモアノ近クヘ行カネバナラナイ。 マスターガラング・ラングラーニ殺サレタナラ、二人ノ努力ガ無駄ニナル。 デアル以上、マスターハ私トトモニ行動シ、私ガ護衛シナケレバナラナイ。 故ニマスターモアノ症状ガ出ル空間マデ行カネバナラナイ。 ・・・ソレデモ助ケルノカ?」 「それでも、よ」 ルイズの言葉に、迷いは無かった。 「・・・キュルケトカイウ女ハマスタートハ不仲ダ。 ソシテタバサトカイウ小娘ハ今日初メテ会ッタバカリ。 命ヲ賭ケルニハ、アマリニモ安イ間柄ダ。 ナノニ、何故ソノ二人ノタメニ命ヲ投ゲ出セル? 親友デモ、血族デモナイ相手ニ何故ソコマデデキル?」 それは、ホワイトスネイクにとって率直な疑問だった。 以前ホワイトスネイクがいた世界 ――かつての自身の本体、プッチ神父とともにあった世界でのこと。 あの世界で戦った男――空条承太郎は、 娘を守るために千載一遇の勝機を捨てた。 そしてその空条承太郎の娘、空条徐倫もまた、 父親の記憶のためにプッチ神父を仕留めるための最大の好機を逃した。 何故そのようなことが出来るのか。 それは親子だからだ。 互いに血を分けた存在だからだ、とホワイトスネイクは考えていた。 また、スタンドを探して世界中を巡った旅の中で、 プッチ神父を友の仇、親友の仇として襲うスタンド使いもいた。 そうしなれば、プッチ神父にスタンドを奪われることも、 その後にドロドロにされて死ぬことも無かったのに。 なのに彼らはプッチ神父に挑まざるを得なかった。 挑まなければ、自分の心に決着を付けられなかった。 何故そのようなことが出来るのか。 それは親友だからだ。 互いが互い無くしては生きては行けない存在だからだ、 とまたホワイトスネイクは考えていた。 だが、この状況は違う。 今自分の主人の前で死に掛けている二人の小娘は、 主人の血族でもなければ主人の親友でもない。 なのにこの小さな主人は、そんな二人のために命を賭けると言っている。 何故そんなことが出来る? 何故自分の命をそこまで簡単に扱える? それが、ホワイトスネイクには理解できなかったのだ。 「ソシテ助ケタイ、トイウノハ自己満足カ? ソレトモ偽善カ?」 さらにホワイトスネイクは厳しい問いをぶつける。 「・・・そうかもしれない。 役立たずになりたくないって気持ちが、わたしの中にあるもの。 でもそれは二人を助けない理由には絶対にならない。 だから、助けるのよ。 わたしが助けたいから、助けるの」 それが、ルイズの真摯な思いだった。 確かにキュルケには気に入らないところもある。 タバサって女の子に至っては、助ける義理も何も無い。 それでも、見殺しには出来ない。 だから、助ける。 自分が助けたいから、助ける。 それが、ルイズの答えだった。 「ソウカ」 ホワイトスネイクはそう短く言うと、ルイズに向き直る。 そしてルイズを片手で抱え上げる。 「覚悟ハイイナ?」 「いつでも」 ホワイトスネイクの問いに、ルイズが短く答える。 「承知ッ!」 その答えにホワイトスネイクが力強く応えるッ! そして床を強く蹴り、二人の少女の下へと疾走するッ! 「なッ、なにしてやがるッ!!」 それに驚いたのはラングラーである。 無傷で確保しなければならない相手が自分が作り出した死の空間へと、 何のためらいも無くホワイトスネイクとともに突っ込もうとしているのだ。 このままでは「無傷での確保」は不可能。ならば、阻止するしかないッ! ラングラーは最後の補給を終えたばかりのJJFに腕を構えさせる。 ドンドンドンドンドンドンッ! そしてホワイトスネイクの動きを追うように、 JJFにありったけの鉄クズを撃ち放たせるッ! 計画性のカケラもない行動だった。 だが任務を完遂することの方が、ラングラーには重要だった。 しかしホワイトスネイクは速い。 放たれた鉄クズの半数はホワイトスネイクが通り過ぎた直後の空間を貫き、 ホワイトスネイクにはかすりもせず、 しかし残り半分はホワイトスネイクへと殺到する。 だがホワイトスネイクはそれらを拳で弾き飛ばそうとはしない。 逆にルイズを庇うようにガードを固める。 ドシュシュシュッ! そのホワイトスネイクに、いくつもの鉄クズが突き刺さるッ! その数、4発。 足に、脇腹、腕に、そして頭に着弾し、頭部に命中したものはその一部を吹き飛ばしたッ! しかしホワイトスネイクは止まらないッ! 苦しみもがきながら空中を漂うキュルケとタバサの元へと一直線に駆けるッ! そして、キュルケとタバサを苦しめる症状 ――真空の魔の手が、ルイズにも襲い掛かる。 ルイズの鼻から、突然鼻血が噴出す。 同時に、ルイズの呼吸も苦しくなってくる。 ホワイトスネイクが自身の腕からDISCを抜き取ったのはその瞬間だった。 そして抜き取ったDISCを間髪いれずにルイズの頭部に差し込むッ! 「命令スル。『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』」 ホワイトスネイクが、静かにそう命令する。 と同時に、ルイズの鼻血が止まった。 外気圧と体内気圧の差のために体内から血液が押し出されるのを、 この命令によって防いだのだ。 しかし、ルイズの呼吸が苦しいのは変わらない。 ルイズの周囲に殆ど酸素が存在しない状況を変えることは、 ホワイトスネイクのDISCの命令ではできないからだ。 しかし、血液が全て体外に押し出されてミイラになるよりは、 まだ死ぬのが遅い。 その僅かなタイムラグに、ホワイトスネイクは全てを賭けたのだ。 やがて、酸欠でルイズが意識を手放す。 ルイズは自分の意識が真っ白になっていくのを感じながら、 ホワイトスネイクが、二人を救ってくれることを祈った。 そしてホワイトスネイクは、キュルケとタバサの元へ到達した。 スデに意識を失っていた二人に、ルイズにしたものと同じ命令を差し込む。 後数秒でも遅れていたならば二人の命は無かっただろう。 しかしこれで二人の命はもう1、2分は稼いだ。 あとは・・・ラング・ラングラーを倒すのみ。 そう決意してキュルケとタバサを背負うと、ラングラーのほうへ振り向く。 そして振り向いた先には、驚愕に顔を歪めるラングラーがいた。 「バカな・・・真空の中で・・・何故・・・血を吹き出さねえ・・・。 ホワイトスネイク・・・テメー一体・・・何を、しやがった・・・」 「何ヲシタカ・・・カ。ソレヲ貴様ガ知ル必要ハナイナ。 何故ナラ貴様ハココデ死ヌカラダ・・・ラング・ラングラー。 貴様ノ無重力ノ能力ガ作リ出シタ真空デナ・・・・・・。」 そう言い終わるや否や、ラングラーに向けて突進するホワイトスネイク。 真空の発生源であるキュルケとタバサはホワイトスネイクに担がれているッ! つまり、この状況は―― 「テメーッ! オレが作った真空で、オレを攻撃する気かッ!」 ホワイトスネイクの目論見を理解したラングラーは、すかさず後方に下がる。 だがすぐに壁に背がぶつかる。 もう後ろには下がれない。 正面から迫るホワイトスネイクは、 自分を真空の範囲に捉えるまであと数歩の位置。 ならば―― 「ジャンピン・ジャック・フラァァァッシュッ!!」 咆哮とともにJJFがラングラーの正面に回りこむ。 そしてコンマ数秒単位で腕を構え、ホワイトスネイクへと向けるッ! 「くらえッ!!」 ドンドン! そして、その腕から鉄クズを撃ち放つ。 だが狙いは甘かった。 大半はホワイトスネイクに当たらず、その周囲へと逸れていった。 ラングラーが一瞬抱いた真空への恐怖が、 その照準を正確なものにしなかったのだ。 だが、3つ。 それだけの数の鉄クズは、ホワイトスネイクへと向かった。 しかもその全てが、ホワイトスネイクへの直撃コース。 だがホワイトスネイクは避けようともしない。 自分を敵の弾丸が貫くのを承知で、 真正面からラングラーのいる方向へと突っ込むッ! ドシュシュッ! そしてホワイトスネイクの胴体を、3つの鉄クズが撃ち貫く。 ホワイトスネイクの、膝が落ちる。 勝った、とラングラーは感じた。 だが、ホワイトスネイクは止まらなかった。 落ちかけた膝を無理やり引き上げ、床を蹴り、 レスラーがタックルをかけるようにラングラーへと襲い掛かるッ! ホワイトスネイクはスタンドである。 そして今のホワイトスネイクは、 本体の状態に一切左右されないスタンドであるッ! そのため人間ならば致命傷の攻撃でも、まだ十分に活動可能ッ! 「バカなッ! こいつ、何故止まらないッ!?」 それを知らないラングラーは驚愕のままにタックルをモロに食らい、 壁にたたきつけられる。 JJFで防御する余裕すらなかった。 そして、真空の範囲にラングラーが入った。 真空が、ラングラーに襲い掛かるッ! 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 時間の経過のために、より強力になった真空がラングラーを襲う。 そして、ラングラーの体の組織を次々と破壊してゆくッ! (マ・・・マズイ・・・ぞ・・・・・。このままじゃあ・・・オレが・・・ヤバイッ! 壁に押さえつけられた・・・この体勢じゃあ・・・逃げられねえッ! くッ・・・こうなったらッ!!) 完全に追い詰められた状況ッ! そしてラングラーが、そこから脱出を図るッ! 「ジャンピン・ジャック・フラッシューーーーーーーーッ!」 ラングラーの絶叫とともに、JJFが部屋の壁に拳のラッシュを叩き込むッ! 追い詰められ、生へとしがみつこうとする精神によって昂ぶり強化された拳は、 壁を一瞬にしてベコベコに破壊し、そしてひび割れさせていくッ! そしてラッシュが始まってから一秒経ったか経たないか、それだけの時間で、壁に大穴が空いた。 そしてラングラーの体が、その後ろから押さえつけるホワイトスネイクのパワーに押され、ルイズの部屋から空中に放り出された。 その瞬間。 「ジャンピン・ジャック・フラッシュ解除ォーーーーーーーーーーーーーッ!!」 ラングラーの絶叫とともに真空が解除されるッ! そして周囲の気圧は突然正常に戻り、ホワイトスネイクとラングラーの身体は、 二人を取り囲んでいた真空地帯へ吹き込んだ突風に、 木の葉のように吹き飛ばされるッ! ラングラーの身体は上空へ吹き飛ばされ、 ホワイトスネイクの身体は地上へと、一気に叩き落されるッ! しかしホワイトスネイクは抱きかかえる3人の身体を手放しはしないッ! 手放す前に、やらねばならないことがあるからだ。 (解除・・・ダトッ!? マズイゾッ! コノママデハ、 外気圧ニマスタータチノ体ガ潰サレルッ! ソノ前ニッ!) ホワイトスネイクは素早くルイズの頭部から命令のDISCを抜き取る。 そしてキュルケ、タバサの頭部からも命令のDISCを抜き取り、3人の体内気圧を正常に戻す。 だがまだ油断は出来ない。 地上が、眼前に迫っている。 今の加速した状態で地面に叩きつけられれば、並の人間はただではすまない。 ましてや今の状況では重傷を負った人間が二人もいるのだ。 ホワイトスネイクが手を離し、勢いのままに地面に激突したならば、間違いなく死ぬ。 ホワイトスネイクは何も持たない状態なら自由に空中を移動できる。 そして軽いものならば抱えたままで空中を移動できる。 だが今ホワイトスネイクが抱え、背負うのは三人の人間。 抱えたまま空中に留まるのは不可能だ。 そうである以上、着地はホワイトスネイクがやらねばならない。 しかしホワイトスネイクの両足はJJFの射撃でダメージを受けている。 着地の衝撃に耐えられるかどうかは怪しい。 出来るか。 ホワイトスネイクは現在の自分の状況に相談し、そして覚悟を決めた。 その直後、ホワイトスネイクは3人を抱えたまま、地面に着地した。 そして着地の衝撃がホワイトスネイクの両足を襲う。 無重力解除による風圧、そして人間3人分の重力が生んだ衝撃が、ホワイトスネイクの足をズタズタに破壊してゆく。 だがホワイトスネイクは膝を突かない。 膝を突かず、衝撃に耐え、着地したままの状態を保ち続ける。 そして、耐え切った。 そのことを実感すると、 ホワイトスネイクは3人の身体をそっと地面に横たえた。 ホワイトスネイクの身体に新たな衝撃が走ったのは、その瞬間だった。 衝撃の発生源は腹部。 そこに目を向ける。 自分の腹部から、握り拳が突き出ているのが見えた。 そして、やられた、と思った。 JJFの拳が、背後からホワイトスネイクの身体を貫いていた。 空中に飛ばされたラングラーは、手足の吸盤で校舎の壁に張り付き、 風圧に耐えていた。 そして耐え切ると、間髪いれずに空中からホワイトスネイクの背後に迫った。 落下の音、衝撃は吸盤で吸収し、ホワイトスネイクに気づかれることは無かった。 そして、あの一撃をホワイトスネイクに叩き込んだ。 ホワイトスネイクの膝が、がくりと落ちる。 もはや両足で立つこともできない。 そしてボロボロの両手では、手刀を使うことも出来ない。 ホワイトスネイクの身体は、もう戦える身体ではなかった。 「これで・・・テメーは・・・もう・・・戦えねえ。 あとは・・・ガキを・・・頂いていく・・・だけだ。 だが・・・・・・その前に・・・テメーは破壊する。 オレを散々ナメてくれたテメーを・・・生かしておくつもりはねえッ!」 そう言いつつ、JJFの拳をホワイトスネイクの腹から引き抜くラングラー。 それと同時にホワイトスネイクの体が崩れ落ちる。 ダメージは、あまりにも大きかった。 これ以上戦えぬほどに、これ以上立つこともできぬほどに。 そして床に倒れこむホワイトスネイクの頭部に、ラングラーはJJFの拳の狙いを定める。 「これで終わりだッ! 今度こそ、ここで死ねッ!!」 そして、JJFの拳が、ホワイトスネイクの頭部へ振り下ろされる。 「勝ったッ!!」 ラングラーが今度こそ勝利を確信し、叫んだ。 ドグシャアッ! ドシュンッ! 直後、二つの音が交錯する。 JJFの拳がホワイトスネイクを破壊する音、 そしてそれとは別の音が校庭に響いた。 そして視界が真っ暗になる。 何だ? とラングラーは一瞬首を捻りかける。 捻りかけて、理解した。 自分の額に、あの忌々しいDISCが突き刺さっている。 そのDISCに目隠しされているのだ、と。 そしてそうだ。 「これ」はさっき見ていた。 これはホワイトスネイクが、あの三人のガキの頭から抜き取ったものだ。 ホワイトスネイクはこのDISCで、自分の真空から三人を守っていた。 しかし、だとしたらその効果は一体・・・。 「ソノDISCノ効果・・・教エテヤロウ」 「!!??」 バカな!? 何故ホワイトスネイクが生きている!? ヤツの頭部は、自分のJJFで完全に破壊したハズ。 手ごたえも十分にあった! …いや、本当にそうだったのか? 本当に、自分が破壊したのはヤツの頭部だったのか? インパクトの瞬間、オレはヤツのDISCで目隠しされたんだ。 だとしたら、そのときに・・・まさか・・・・・・。 「『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』・・・ダ。 ソレデ何ガ起コルカ・・・・・・貴様ニハ・・・スグ分カル」 暗闇の中で、ホワイトスネイクがこちらの意思とは関係ナシに喋り続ける。 『体内気圧を限りなくゼロに近いレベルまで、一気に低下させろ』・・・だと? …何だとッ!? じゃあまさか、これからオレはッ!? 「感ヅイタヨウダナ・・・。貴様ノ体ハコレカラ・・・外気圧ニ潰サレテ、 ペシャンコニナル。 セイゼイソレマデノ間、残サレタ命ヲ楽シメ・・・・・・」 その言葉の直後、ラングラーの体に異変が起こる。 まず、息が出来なくなった。 正確には、肺から空気が一気に押し出されたッ! そして破壊はさらに進行するッ! ラングラーの体はあっという間に圧縮されていき、 ラングラーの全身の穴という穴から血が噴出すッ! 「ガッ・・・ゴボ・・・・・・ガボ、ゴッ・・・・・・」 声にならない声を上げ、ラングラーが呻く。 呻きながらも、JJFに指示を出す。 自分をこんな目に合わせた奴らを、せめて一人でも道連れにするために・・・。 だが、それもすぐに止められた。 JJFの腕が、動かない。 ホワイトスネイクがJJFの両腕をガッチリと捕まえ、その腕輪の照準が三人の少女にそして自分へと向かぬよう、 そして照準が誰もいない上空へ向くように押さえ込むッ! 「ア・・・アガ・・・ゴバ、ガ・・・ガボバ・・・・・・」 しかしラングラーは止まらない。 JJFへの指示を止めはしない。 そして主人のダメージに従ってボロボロとその身を崩壊させていくJJFは、 主人の命令に忠実に、最後の足掻きを見せたッ! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!! それは戦いの序盤でホワイトスネイクに対して行った、マシンガンのような集中射撃。 JJFはそれが自分の最後の輝きであるかのように、ホワイトスネイクに押さえつけられたまま、上空に向かって撃ち続けた。 今までで最大の威力を持った、鉄クズの射撃だった。 撃ち放たれた無数の鉄クズはその大半が校舎に当たり、 そしてそれらを抉り、無数のひびを入れた。 巨大なゴーレムの一撃ですら破壊できない壁に、目に見える形で損傷を与えた。 そして残弾が完全に尽きたのと同時に、 ラング・ラングラーは全身の血を外気圧に絞り取られて絶命した。 ジャンピン・ジャック・フラッシュの姿は、もうその傍らには無かった。 「終ワッタ・・・・・・カ・・・・・・」 ラングラーが死んだのを確認し、ホワイトスネイクはそう呟いた。 そして周りを見回す。 見回して、ひどい有様だと思った。 周囲一体がラングラーの血で染まって真っ赤になっている。 ルイズ、キュルケ、タバサの三人も例外ではない。 全員の衣服が、血で真っ赤になっていた。 もっともキュルケとタバサの衣服は彼女達自身の血でスデに赤く染まっていたが。 (シカシ・・・マズイナ。今ノ私ハ、ホトンド行動不能。 ソレニ助ケヲ呼ブコトモママナラナイ。 マスターハマダ大丈夫ダガ・・・コノ二人ハ応急処置ガ必要ダ。 クソッ・・・・・・ドウスル・・・・・・?) 自身も再起不能寸前でありながらも、冷静に状況を判断するホワイトスネイク。 その時―― 「ルイズの使い魔君ッ! 君の命がけの行動、僕は敬意を表するッ!!」 バカみたいにでかくて、それでいて妙に気取った声が聞こえてきた。 どこか聞き覚えがあった声だ、と思いながらホワイトスネイクがそちらを見る。 「ちょっとギーシュ! あんた分かってるの? あいつはあなたを殺しかけたようなやつなのよ?」 「黙っていてくれモンモランシー。僕は今猛烈に感動しているんだ!」 声の主はやっぱりギーシュだった。 そしてその後ろから、モンモランシーがギーシュを引きとめようとしている。 しかしギーシュはそれを引きずるようにしてこっちにやってきた。 「・・・・・・何シニ来タ」 ジト目でギーシュを見ながら言うホワイトスネイク。 「そんなことを連れないことを言わないでくれ、使い魔君。 僕は君の命がけの戦いの一部始終を見ていた。 それで・・・感動したんだ! 不届き者から三人のレディーを守り、 満身創痍になりながらも勝利した君の姿に! そして実感したよ! 君と僕は似たもの同士だったんだ! 君は一週間前のあの日、僕と決闘したろう? それが何故なのか、ずっと気になっていたんだ。 でもそれが分かったよ! 君は君の主人であるルイズのために、 レディーのために戦ったんだね! あのメイドを僕の勝手から守ったのも、 レディーを守るという君の新年に基づいたものだったと分かったんだよ! はっはっは! そんな神妙な顔をしないでくれ! 何も言わずとも分かる! 君のその行動こそが君の精神のあkガボゴババゴボ・・・・・・」 延々と喋り捲っていたギーシュが、突然彼を包み込んだ水によって黙らされた。 やったのはモンモランシーである。 しかしギーシュもなんと言うか、相当にアレだ。 一週間前に自分を危うく殺すところだった相手にここまでフレンドリーになれてしまうとは。 お調子者というべきか、能天気というべきか、とにかく色々と心配だ。 そしてギーシュを黙らせたモンモランシーがその前に出て、 じろりとホワイトスネイクをにらむ。 ホワイトスネイクも、それを正面から見返す。 「・・・あんたがギーシュに決闘でしたこと。私は忘れて無いわ。 でも・・・・・・」 そういって、地面に横たわる三人に目を向けると、短くルーンを唱える。 すると、キュルケとタバサの傷が、溶けるようにして浅くなっていく。 水のメイジにしか使えない、「治癒」の魔法だ。 ホワイトスネイクは驚いてモンモランシーを見る。 「この三人がケガをしてるのは別の話よ。 応急処置をしてくれる人を探してたんでしょ? ・・・だったら私がしてあげるわよ。 この三人のケガはどれも致命傷じゃないし、 水のラインメイジの私なら応急処置が出来る。 ただ、キュルケとこの青髪の女の子は相当に弱ってるから、 魔法薬での治療が必要になるけど。 ・・・別に、あんたがしたことを許したわけじゃないんだからね。 勘違いしないでよ」 「・・・覚エテオク」 ホワイトスネイクがそれだけ言うと、 モンモランシーはぷい、とそっぽを向いてギーシュのほうへ戻っていった。 そのギーシュが、何やらゴボゴボ言っている。 「どうしたのよ、ギーシュ?」 「ばべ! ばべぼびべぐべぼ!」 「・・・何言ってるかわかんないわよ、ギーシュ」 「ばばらばればぼ! ぼぼばび! びびぼぶびぼごべば!」 モンモランシーの魔法で水攻めにされたまま、 ギーシュが指を差しながら何か言っている。 だがモンモランシーには何が言いたいのか全く理解できない。 かろうじて、何がしたいかが理解できたホワイトスネイクが、 ギーシュが指差す先を見ると―― 「・・・・・・何ダ、アレハ?」 そこには、全長30メイルは下らない、巨大なゴーレムがいた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/ffogata/pages/11.html
花図鑑一覧
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/395.html
フーケ捕縛から数日経ったが未だイタリアへ戻る手段は見つかっていない。 左手のルーンは『ガンダールヴ』の印というもので始祖ブリミルの使い魔で武器全般に精通していたらしく パンツァーファウストの使い方が分かったのもこれの効果らしかった。 グレイトフル・デッドを使い敵を排除してきたため今まで気付けなかったのだが武器なら特になんでもいいらしく発動するらしい。 「ふん…スピードとパワーが上がっているが…本体に上乗せされる形みてーだな」 デルフリンガーを持ち試してみて確認できたのは 1.本体のスピードとパワーの上昇 2.武器の使用方法が理解できる この二つだ。 スタンドも同時に発動させてみるが、グレイトフル・デッドの破壊力と精密性とスピード自体は上がっていない。 直触りに関しては、本体が直触りを仕掛ければ済むが片手が塞がってしまう事で攻撃は弾いたりする事は可能だが直は片手のみで行う事になる。 「本体のパワーアップか…スタンドの能力を重視するか…か。両方できりゃあいいんだが、そう都合よくはいかねぇもんだな」 錆を落としながら (リゾットならメタリカですぐ落とせるんだろうがな) と思っているとデルフリンガーが口を開いた。 「兄貴ィ、兄貴の横に居る化物は何なんだ?」 「……オメー、スタンドが見えているのか?」 「見えてるというより感じていると言った方が正しいぜ」 「まぁ剣が話してる事自体異常だからな…感じ取れても不思議じゃあねぇが」 「それにしてもおっかねぇよなぁ…夜に他のヤツが見たらぜってー茶ァ出すね」 「違いねぇな」 茶の部分はスルーし、己のスタンドを改めて見る。 下半身は存在せず胴から下は触手が『ウジュルジュル』と言わんばかりに蠢き無数の眼を持ちそこから煙を出しながらにじり寄ってくる化物を夜に見れば誰だってビビる。 ペッシが初めてグレイトフル・デッドを見た時なぞ本気で泣いていた事を思い出す。 もちろん説教に突入したのは言うまでもないが。 錆落としと印の効果を試し終えると、爆睡かましているルイズを叩き起こし授業へと向かう。 正直興味は無いが『護衛』継続中であるからには一緒に出ておかねばならない。 適当にルイズの近くの席に座る。 さすがにこの段階になって誰もその行為にケチ付けようとする者は居ない。 そこに新手の教師が現れる。 長めの黒髪に漆黒のマントを纏い冷たい外見と不気味さを併せ持った男だ。 「…雰囲気がリゾットに似てるな」 「リゾット?誰それ」 「オレ達のリーダーだ」 男が『疾風』のギトーと名乗った。 外見に反して結構若いらしく、その辺りもリゾットに似ている。 だが、性格そのものはリゾットとは大違いで一々人を挑発するような言い方をする。 (夜道に後ろから刺されるタイプだな) 率直にそう思う。 プロシュート自身、些細な恨みを積もらせ殺されたヤツを腐る程見てきた。 挑発に乗ったキュルケが直系1メイル程のファイヤーボールを作り出しギトーに向け放つが ギトーは腰に差した杖を引き抜きそのまま剣を振るような動作で烈風を作り出し火球を掻き消す。 その烈風に吹っ飛ばされキュルケがこっちに吹っ飛んでくるが避けるのも何なので一応受け止めた。 それが元でルイズとキュルケが睨み合いを始めるがギトーはそれを無視するかのように解説を続ける。 「『風』は全てをなぎ払う。『火』も『土』も『水』も『風』の前では立つことすらできない 試した事は無いが『虚無』さえも吹き飛ばすだろう。つまり……『風』が最強だぁぁぁ!はらしてやるッ!!」 もちろん様々なタイプのスタンド使いと戦ってきたプロシュートはそうは思わない。 地形、相性、策、他にも色々あるが様々な要因で勝敗が変わる事を身を以って知っている。 グレイトフル・デッドの老化がギアッチョの氷に通用しないがリゾットの磁力では氷を突破できる事を。 そしてまたリゾットが姿を消したとしても自分の能力ならば見えなくとも攻撃できる。 ホルマジオがよく言っていたが要は使い方次第で幾らでも変わるのだ。 ギトーがヒートアップしながら 「カスのくせによォォ~~ええ!ナメやがって、てめえ!」 と呟いているがそこに妙な格好をしたコルベールが乱入してきた。 プロシュートが思わず(どこのルイ14世だ)と突っ込みを入れたくなるぐらい不似合いな格好で。 その慌てている様子から見てかなりの大事なのだろうと予想を付ける。 コルベールが授業の中止を告げると教室が歓声が上がった。 「本日先の陛下の忘れ形見、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニア御訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸されます」 早い話偉い人が来るから出迎えの準備を生徒全員で行うという事である。 魔法学院の正門を通り王女を乗せた馬車を含めた一行が現れるのと同時に生徒達全員が杖を同時に掲げる。 北の将軍様も驚きのタイミングだ。 オスマンが馬車を出迎え絨毯が敷かれ馬車の扉が開き先に男が先に外に出て続いて出てきた王女の手を取った。 同時に生徒達から歓声が沸きあがる。 「随分と人気があるみてーだな」 「当然じゃない、トリステインの花って言われてるのよ」 だがプロシュートの興味は王女より鷲の頭と獅子の胴を持つ幻獣に乗った羽帽子の男を見ていた。 (マンティコア…いやグリフォン…だったか?メローネがやってるゲームで見た事あるが 貴族ってのはマンモーニばかりだと思っていたが…やりそうなのも居るじゃあねーか) ルイズやキュルケもその男に視線がいっているのだがプロシュートも見ているため気付いていない。 三者三様の視線が浴びせられている事も気付かず男は去っていった。 夜になり部屋に戻ったルイズとプロシュートだがルイズがベットに腰掛けたまま動こうともせずポケーとしている。 別にプロシュートにとってはどうでもいいのだが何時もと違う様子にはさすがに違和感を感じていた。 しばらく何もしないでいると、プロシュートの顔が瞬時に暗殺者のそれに変化したッ! (……一人だが…抜き足差し足でこっちに向かってきてるな) その時ドアがノックされた。 規則正しく長く2回、短く3回ノックされそれを聞いたルイズがハッと気付いたかのように反応した。 だがスデに警戒態勢に入っていたプロシュートの方が早い。 急いで着替えているルイズを尻目にドアを慎重に開ける。 真っ黒な頭巾を被っていた人が部屋に入ってきたのを見た瞬間――― 「きゃ……ッ……ッ…!」 プロシュートが流れるような動きで叫ばれないように口を押さえ押さえ込むようにそいつを地面に押し付けていた。 「…オメーみたいにあからさまに怪しいヤツってのも今時珍しいが そんな格好で人の部屋に入ってくるって事は賊とみなされても仕方ないって『覚悟』してきてるんだろうな」 言いながら、頭巾を剥ぐがそれより先に何かの魔法を使われた。 「ーーーッ!グレイトフル・デッド!」 何かの魔法を使われたからには老化させるしかない。その結論に達し直触りを仕掛けようとした刹那―― 「やめてプロシュート!そのお方は姫殿下よ…!」 慌ててそう叫んだルイズが膝を付いた。 その声に瞬時に反応し直触りを中止する。 頭巾を剥いだ顔を見る、興味が無かったためあまりよく見ていなかったが確かに昼間見た王女だった。 それを確認し、拘束を解くがまだスタンドは何時でも触れられるようにしてある。 アンリエッタが多少苦しそうに、だが凛とした声で言った。 「お久しぶりね…ルイズ・フランソワーズ」 ←To be continued 戻る< 目次 続く